担当者の方と一緒に完成させたスパイク
陸上をはじめて21年、プロ陸上選手になって6年になりますが、僕自身、好奇心が旺盛な性格のせいか、陸上界だけでなく多種多様な方に出会えてこれたことが幸せだと思っています。
たとえば、長年お付き合いさせていただいている、ナイキジャパンの担当者の方は、ご自身が陸上界でご活躍されていたこともあり、選手の気持ちや要求を的確に理解してくれます。スパイクの形や感触などの細かな要求に応えてくれるので、安心して自分の思いを話せます。
プロアスリートは何よりも身体が資本です。ぼくたちの身体は口から入れるもの、つまり食べるものと飲むものによって細胞が生成されます。その次に、どの筋肉をどのようにして鍛えたか。最後に、勝負の瞬間に持っている力の何割を出せたか。スポーツはこの3要素によって勝負が決まります。たった3要素ですが1つ1つが大事な要素です。

「考えを分かち合える方が沢山居るってとても心強いですよね」と笑顔で語る為末さん
たとえば、口にいれるものを完全に自分でコントロールすることは不可能です。極端な話ですが、この一口が自分の身体によい影響を及ぼすのか、そうではないのかを判断することはできません。ただ、できるだけ自分の思う究極の身体をつくれるようになりたいと考えています。
そんな僕の考えを分かち合ってくれる方がたくさんいます。
僕の身体を1つのマシーンとして見てもらって、そのマシーンがどうやったら最大限に効力を発揮するのか、いろいろな角度から精査し、教授してくれる方々です。そういった方々と、自分の身体についてさまざまな意見交換ができるのはすごく面白いですし、恵まれていると思います。
競技としては個人競技ですが1人ではないということを強く感じます。
欧米でスポーツが生活に根付いて発展しているのは、スポーツをもっと良くしたいと思っている人が、政界、経済界、医学界にとどまらず、生産、流通、小売と多くの業界にたくさん居て、スポーツに自分の仕事の要素を活かそうという意識を持っているからだと思います。

アマチュアスポーツの場合、不況による企業撤退で引退せざるをえないケースが多く見受けられます。
たとえば、学生の奨学金制度のように、優秀な選手が奨学金で現役を続け、オリンピックに出場したり、メダルを取れれば奨学金の返済が免除され、それ以外の場合には引退した後に返済する仕組みが日本でも応用できたら、“金銭による引退”は防げるのではないでしょうか。実際、ヨーロッパでは、ロンドンオリンピックに向けてすでにスタートしているそうです。
つまり諸外国では金融の世界で働いていてもスポーツに携わることができる可能性があるんです。
他にもスポーツ用のコンタクトレンズや眼鏡、連戦の合間に身体を休める寝具、もちろん飲食関連も。何でもスポーツにつながるはずで、アプローチ方法は無限大と言えます。
プロスポーツの世界は閉鎖的になりがちです。
けれども、たとえば遺伝子研究者の理論が、競技能力や身体能力の向上に繋がることがあるかもしれません。
ですから、僕も無限の可能性を信じて、自分からいろんな業界の方に会いに行くことを心がけています。

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為末 大
プロ陸上競技選手
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